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西川 一誠
岩波書店 (2009-07) 定価:735円 / Amazon価格:735円 ISBN:9784004311959 私も富山から見ればさらに地方の志賀町に2年間住まわせて頂き、毎朝出会う人たちから「おはようございます」と声をかけられ、たまに富山に帰ると「おられなかったから玄関に野菜を置いといたよ。」と言われ、その暖かさにびっくりいたしました。 富山に戻ってからは、知った人とは挨拶をしますが、知らない人に挨拶をすることはまずありません。しかし、こちらから挨拶をするときちんと返してくれます。 さらに都会に参りますと、知らない人に挨拶をすると、挨拶を返されるどころか危害を受ける心配があり、子供たちは知らない人からの挨拶に返事もしません。 人口密度度が高いということは効率的で便利な面が多いのでしょうが、人的ネットワークが消滅し、大切なものを失ってしまう欠点も多いような気がします。 だから地方は今のままで良いのだ、とは決して思いません。知事が書いておられるように、高齢化がどんどん進み、10年後には機能しない地方が続出してくるでしょう。 志賀町でも、岩海苔やころ柿などの特産物でさえ、その生産に携っているのは高齢者ばかりであり、10年後を考えると心配になります。 まだ人が住んでおり、田畑、山林、地域産業がまがりなりにも回っている今、手を打たなければ、子供の代、孫の代には地方の環境はさらに悪化し、社会として機能しなくなってしまう懸念があります。 一方都会は子供を生み育て、老人が静かに過ごす場所としてはふさわしくありません。 その時期を地方で暮らすのが妥当だとすれば、青年期に都会で活躍することで、都会に発生する税収を地方にきちんと分配し、地方で子供を育て老人を見守る仕組みづくりが、日本全体のために必要不可欠のものであると思います。 道州制については、その仕組みを考えていく過程において結論付けていくべき課題かと思います。道州制ありきでもなく、現在の県を固執するのでもなく、都会と地方のあり方や税収の配分、などを考えていく上で、最適な解を求めていけばよいと思います。 個人的には、北陸がさらに連携して交通問題や産業育成に取り組んでいくべきと思いますし、交通網が発達した今、県単位の行政区画は小さいとは思いますが、まず議論すべきは入れ物の形ではなく、入れるものをどうすべきかから出発すべきと思います。 地方のすばらしさを継承していくためにも、地方の活力を何とかして維持していかなければ、と本を読んで感じさせて頂きました。
トム・クランシー
文芸春秋 (1985-12) 定価:650円 / Amazon価格: - 円 ISBN:9784167275518 その艦長ラミレスはレッドオクトーバーごとアメリカに亡命するため、乗組員を完璧に騙しアメリカに向かう。 それを知ったソ連はレッドオクトーバーを撃沈すべく全艦隊上げて出動する。 ソ連とアメリカはレッドオクトーバーを挟んでポーカーフェイスで騙しあう。 かなり昔の本だが、今でも充分に通じ、とても面白い内容だ。
青木 新門
文藝春秋 (1996-07) 定価:490円 / Amazon価格:490円 ISBN:9784167323028 原作は青木新門さんの「納棺夫日記」 青木さんは私が高校の頃、富山郵便局の裏で「スカラベ」と言う穴蔵のような喫茶店を営まれていた。 スカラベとは「糞転がし」という虫の名前だと聞いた記憶があるけれど、隠れ家のような素敵なお店だった。 しかし、時代の波に取り残されたのか、その店をたたまれ、働き口が無くて葬儀屋に勤め、死んだ人をお棺に納める仕事をされた。 最初は嫌で嫌でたまらなかったけれど、きれいにしてあげることで家族に感謝されて気持ちが切り替わり、その後、生と死を真剣に考えるようになり、納棺夫日記という小説を書かれたと大分前にお聞きした。 死を見つめるようになって始めて生を知りえる。 生をないがしろにする人が日本でも年間に3万人以上いる時代に、納棺夫日記が映画化され、アカデミーを受賞すると言うのは、時代は又、生を大切にする方向にゆれ戻そうとしているのだろうか。
松本 清張
新潮社 (1971-02) 定価:700円 / Amazon価格:700円 ISBN:9784101109169 映画の舞台として高浜町末吉が出てきたり、七尾からの能登鉄道が出てきたり、ヤセの断崖が自殺の舞台とされたり、能登金剛が最後の情景となったりと、志賀町がたくさん出てくる。 今年は清張の生誕100年として再び映画化されるとも聞く。 ヤセの断崖は能登半島地震で厳しさがなくなり、冬の雪もすっかり少なくなり、能登鉄道も廃線になり、と舞台背景はかなり変わってしまったが、新しい感覚で美しい志賀町を描いて欲しいものだ。
村上 龍
幻冬舎 (2007-08) 定価:760円 / Amazon価格:760円 ISBN:9784344410008 北朝鮮の兵士は手刀を鍛えるため、豆の入ったバケツを突く。一日突いていると爪が剥がれるが、それでも突いていると新しい強い爪が生えてくる。一ヶ月も突き続けると次は豆を砂に変え、さらに石に変えて鍛える。そうして鍛えた手刀はもうナイフと同じであり、人の身体くらいは簡単に突き通す。 感情を殺すことも厳しく仕込まれ、何日も連続した行軍にも平気であり、2時間だけ休め、と言われると正確に2時間熟睡して回復させる。 戦争状態になるとたった10秒間の休みによって脳を休めるのだそうだ。 そうして鍛えられたコマンドが9人進入し、福岡球場を占拠し観客3万人を人質に取る。政府が何も手を打たない間に、木で作った12艇の輸送艇がレーダーをかいくぐって空港に降り立ち、500名の部隊となる。 相変わらず日本政府は何もせず、波及を恐れて福岡市を封鎖する。 福岡市民が人質となって何も手が打てないまま、北朝鮮からは12万人の部隊が出発した。 北朝鮮は、この部隊は反乱軍であり必要ならば反乱軍への攻撃に参加する、と表明するため、北朝鮮からの侵略戦争と抗議することも出来ず、12万人の船隊をただ追跡する。 最後は、北朝鮮とも日本政府とも全く関係のない武器収集や毒虫を育てていた狂気集団が彼らを破滅させて終わるのだが、無防備で何も決断できない日本の状況は非常にリアルであり、いつ現実化してもおかしくない。 武装した集団が悪意を持って入国して来たら、自衛隊、海上保安庁、警察はそれを阻止出来るのだろうか。 民間人は、実際に危険がないときには、何でも反対行動を起こすことは出来るのだろうが、その結果自分の身に危険が及ぶことが確実な時に身を挺して阻止することが出来るだろうか。身を挺すれば阻止できる可能性が高いときはまだしも、単なる無駄死にが確実な時に、行動する事が出来るだろうか。 それは不可能であり、危険から少し距離を置いたものが判断し行動をしなければいけないのだろう。 何かを守るためには何かをあきらめなければいけないことが殆どだ。 今回の場合は、初期段階としては3万人の人質を犠牲にして福岡市民を守る。次の段階では福岡市民を犠牲にして大多数の日本国民を守る。そういった取捨選択が出来るだろうか。 現実的には第二次世界大戦時にドイツ軍に対してパリ市民は地下に潜行して戦ったように何とか生き延びつつ抵抗していくことをやっていくしかないのではないだろうか。 しかし、そのためにも身体を鍛えいろいろなリスクに備えておかなければならない。平和ボケした我々は武装し鍛え上げられた兵士の前ではあまりにも無力である。
瀧澤 中
中経出版 (2008-11-24) 定価:600円 / Amazon価格:600円 ISBN:9784806131854 1.味方を作る ・イギリスはロシアのアジア進出を阻止したかった。 ・義和団事件で日本兵が見事に外国人を保護し信頼された。 ・毅然として不平等条約の改定に全力を尽くした。 (欧米列強は力のある者、能力の高い者に敬意を払う。) ・ロシアのマカロフ中将の戦死に対して哀悼の意を表した。 (武士道に対して、日本びいきが増える。) ・以上により日英同盟が結ばれ、米は日本に情報を与えた。 2.技術力 ・リスクを考え、兵器の国産化を進めた。 ・管理、保管に優れ破壊力のある下瀬火薬の発明 ・木村駿吉による無線電信の開発 3.情報を活かす ・明石大佐をロシアに送り、資金をふんだんに与えた。 ・反ロシア抵抗運動を支援しロシア軍をモスクワに留めた。 ・福島がシベリアを踏破しシベリア鉄道に精通した。 ・さらに東南アジアでイギリスの動きを見事に読んだ。 4.資金調達 ・国を富ませるために国民を富ませた。(殖産興業政策) ・国家予算2.5億の日本が日露戦争で20億円弱を使った。 ・高橋是清が人脈を活かしてユダヤ資本を動かした。 5.常識ある首脳陣 ・専門家を活かしつつ信念と見識を持って全体を統率した。 ・負ける恐怖を背景に決して逃げずに真剣に考えた。 ・負けないための手を打ち尽くした。 逆に第二次世界大戦では昭和天皇が敗戦理由を4つ挙げている。 ・敵を知り己を知るということを体得していなかった。 ・精神主義に陥って科学を軽視した。 ・陸海軍の不統一 ・常識ある首脳陣を欠いた。
馬場 啓一
講談社 (2002-05) 定価:490円 / Amazon価格:490円 ISBN:9784062734424 貿易で財を成した大富豪の家に生まれ、 ケンブリッジ大学で紳士道を学び 確固たるプリンシプル(信念、信条)を貫き通し、 戦後の敗戦処理を占領軍と正々堂々と論じ、 憲法の日本案も作成する。 貿易庁長官として商工省を通商産業省に移行させる時にも中心的役割を果たす。 電力再編成にも関わり、請われて東北電力の初代会長も勤めている。 一方、ブガッティやベントレーなどの高級車を乗り回し、 ツイードのスーツを着こなし、 イギリス人でさえ手に入らないシングルモルトウイスキーをストレートで飲む。 年老いては農業を楽しむとともに、軽井沢ゴルフクラブの会長職としてルールを重んじ迅速なプレイを徹底し、 「老人は叱ることが仕事だ」と思っていた節がある。 奥様は華族出身の随筆家として有名な白洲正子。 夫婦円満の秘訣を問われて次郎は 「一緒にいないことだ」と言っている。 我慢強く相手を認め、馴れ合いや妥協でなく、お互いに生き方を尊重することが大切なのだろう。 生まれも、育ちもとても及ぶものではないが、プリンシプルを貫く生き方は少しでも学びたい。
定価: - 円 / Amazon価格: - 円
JTBでは企業内のスポーツイベント運営を引き受ける窓口を設置。ツタヤオンラインは1泊二日の日程で社内運動会を開いた。目的は競技に勝つことではなく、組織力向上。最初は「面倒くさい」と渋る声が多かったが、運動会の後は挨拶程度だった管理職同士が談笑したり飲み会に出かけるようになった。 ウエザーニュースでは経営職スタッフを対象に年4回番付が番付会議で決定・発表され、報酬は番付に連動する。新入社員と社長の年収の差は7倍と決め、儲かれば皆で分かち合う。 日産自動車のピカピカ運動;研究開発部門が売る車だけでなく、売った車を磨く。試作車自慢大会では自分の設計がいかにすごいかをアピールする。 とんかつ新宿さぼてん「ほめほめ隊」;店舗の改革案を現場の従業員に立てさせる「マーケットクエスト」活動により納得して目標に向かわせる。外部の調査会社に委託した店舗モニターの覆面調査員に褒める所を見つけてもらい、直接褒めてもらう。新商品について、売り込むポイントや試食の勧め方をDVDに収録して見せることにより「やってみせ、言って聞かせて、させてみせ、褒めてやらねば人は動かじ」「改革するには緊張感を高め臨戦態勢にするアドレナリンだけでなく、動機付けをし快楽を増幅させるドーパミンが出る手法も必要」 社長の顔が見え、お客の顔が見え、自分の成長が見える仕組みづくり。 働く野性を引き出す5大欲求 ・仕事に対する意味欲求;社会的に意義がある、貢献し甲斐のある仕事がしたい。 ・成長、上昇欲求;新しいノウハウやスキルを身につけ自分のキャリアを高めたい。 ・創造性発揮欲求;自分らしい創意工夫や創造性を発揮したい。 ・承認欲求;誰かから認められたい。多くの人から認められたい。 ・自己実現欲求;会社や仕事と家庭や生活をバランスさせたい。
半村 良
講談社 (1999-03) 定価:580円 / Amazon価格: - 円 ISBN:9784062645294 大気汚染が進み、光化学スモック注意報が発令されると、倫理観が極端に薄れ、青年期の人たちは快楽におぼれるようになる。 原因は退廃した日本を何とかしようと、国を影から動かすフィクサーたちが、神経に作用する微量物質をガソリンの添加物に配合して拡散したため。 このままではいけない、何とかしなければと世論が形成され始めたころに、逆に作用する物質を撒き、集団主義&規制の時代に入っていく。 それを阻止し、自由を取り戻そうとする嵯峨野は、実はフィクサーの一族であり、彼は殺されることなく、彼を取り巻く人達がすべて殺されてしまう。 といった、ストーリーなのですが、決して30年前以上昔の話ではなく、現状は小説以上に退廃している。 秋葉原で集団殺人を起こしたり、いたいけな少女を監禁したりする事件を聞くと、そういった事を知恵付けるビデオやゲームを取り締まるのは当然だとは思う。 しかし、9.11事件をきっかけにアメリカでは盗聴が合法的に行われるようになり、テロ対策という名目の元に戦争が合法化されている状況を見ると、取締りが極端化するのも考え物だ。 自由と規制をどうバランスさせるかの兼ね合いが、求められる。
ジョージ ソロス
ダイヤモンド社 (2004-05) 定価:1,680円 / Amazon価格:1,680円 ISBN:9784478170557 さすがジョージ・ソロスは現在のバブル崩壊も予見している。 彼はこう言っている。 「問題は、国内でも国家間でも勝者が敗者のマイナスを埋め合わせないことにある。」・・・相互に助け合って皆で生きてゆく社会から、他人を蹴落としてでもひたすら高給を追い求める空しい社会になってきている。 「金融市場は放っておけば均衡には向かわず危機に陥りやすい。状況が一定以上に悪化するまでは各国政府は断固たる姿勢をとろうとはしないが、そのときには危機予防としては手遅れになっている。」・・・確かに協調介入はしているが既に遅し。 「バブルの初期段階では参加者は自分の愚かしさに気付かない。プロセスが進んだところでようやく期待と実際の展開との乖離が見えるようになる。それから決定的瞬間が訪れ、続いてトレンドが反転し、ときとして甚大な被害をもたらす。」 「バブルについて重要なことは、それが予め定められた運命ではなく、いつでも断ち切ることが出来、その時期が早ければ早いほど被害は少ない。」 「現実とその解釈の再帰的な相互作用が制御しきれなくなるのは批判的思考が停止させられたり、押さえ込まれたりしたときだけだ。9.11以降にまさにそれが起こっている。」 だから、ソロスは一刻も早く断ち切ろうとして、ブッシュの再選を阻むために本書を出版した。 しかし、結果はご承知のとおり、票数では負けたが、獲得議員数でかろうじてかってブッシュは再任された。 現在の状況はそのときから幕が開いたのかもしれない。
司馬 遼太郎
光文社 (2002-11-12) 定価:660円 / Amazon価格:660円 ISBN:9784334733995 「城をとる」という、一人の男が小さいときからの夢を実現する稀有壮大な話。 石原裕次郎に頼まれて映画の原作として書かれ、裕次郎主演、中村玉緒、松原智恵子、芦屋雁之助、滝沢修らが出演し、昭和40年に公開されたそうな。 「男というものは、子供のころからの夢をどれだけ多くまだ見続けているかで、値打ちの決まるものだ。」 「一番大事なものをかけねば遊びは面白くならん」 「男の情熱というのは、第三者から見れば常にむなしくばかげている。物狂いとしか見えない。その目的のむなしさ、行動がばかばかしくあればあるほど、その男はもっとも「男」にちかい男なのだ。」 「戦に勝つ大将とは知と勇だけではなく、鈍さがなければ。」 「どうせ物事の結果はいいか悪いか、勝つか負けるか、二つに一つしかない。いわば常に五分と五分である。その五分を悲観的に見る人間に物事は出来ん。」 「奪れる」と信ずれば奪れるものさ。 「方法を失ったとき人間はその目的にまで疑問を抱き始め、次には自暴自棄になる。」 「逆に方法が明快な場合、目的の意味無意味などには心を用いない。時には、勝てる。とさえ思えば、命さえ人間は賭けてしまう」 「惨憺たる状況の中で鋭敏すぎる者はいちはやく敗北感を持つ。敗北感を持った瞬間から自分が浮き足立ち、事実上の敗北が始まる。」 「才覚なぞは、上げ潮に乗っているときに効くもので、退き潮の時にはじっと身をすくめて時機を待つか、破れかぶれの一手に出るしかない。」 男は、・・・あくまでも夢に向かって、ばかをやり続ける生き物なのです。 男は、自分の今日の利益だけを考えてバブルなどと言う情けないものを作り出してはいけないのです。
上田 正昭
大巧社 (2005-07) 定価:2,625円 / Amazon価格:2,625円 ISBN:9784924899605 渤海船は二本の帆柱をもった帆船で、はじめは30人乗りくらいの中型船2~7隻だったが、後半は105人乗り300トンクラスの大型船だった。 秋から冬は北西の風を利用して渤海から日本に、春から夏は南風を利用して日本から渤海に航海した。 平均速度は約3ノット、距離は約800キロのため、7日から10日の航海だったと思われる。 秋に渤海使節団105人を乗せた本船はポシェット湾を出港し、7~10日後に越前~能登に入港した。 その内20人位だけが都に上り、残った人たちは福良津 (現在の福浦港) で船を陸揚げして点検・修理し、冬を越してから帰国した。(推測)
加能 作次郎
講談社 (2007-01-11) 定価:1,470円 / Amazon価格:1,470円 ISBN:9784061984653 幼にして母に死別し、その家運漸く衰え詳さに生活の辛苦を営む。 青年時代しばらく郷里の小学校にて教鞭を執りしが、後志を立て上京し早稲田大学文学部に入学して坪内逍遥、島村抱月、片山伸諾教授の教えを受く。 殊に片山伸教授の門に出入りしてその感化を受くる事多し。 在学中文芸雑誌「ホトトギス」に創刊を発表し、早くも新進作家として嘱望さるる。 明治44年同大学を卒業、翌年春博文館に入り「文章世界」の編集に関わると同時に作家としての精進を怠らず素朴にして叙情豊かなるその作風は漸く文壇の認めるところとなる。
沈 才彬
三笠書房 (2007-02) 定価:560円 / Amazon価格:560円 ISBN:9784837976165 1944年中国江蘇省海門市生まれ、1981中国社会科学院大学院修士、同大学講師、1984東京大学および早稲田大学客員教授、2001年より現職 主な著書「超語句爆食経済」「中国経済読本」 中国とアメリカは表面的には「対立」でも水面下では「連携」 歴史的背景 ・ 1900年の義和団事件でアメリカは清王朝から戦争賠償金を受け取ったが、その金で精華学堂(今の精華大学)を設立し、中国の発展に寄与した。(日本は日清戦争の賠償金で中国を疲弊させた) ・ 第二次世界大戦でABCD包囲網を共に担う同盟関係だった。 ・ 朝鮮戦争でアメリカは中国に勝つことが出来ず、それをアメリカは率直に認めている。 ・ 以上の歴史的背景から、中国に反米感情はあまりなく、アメリカのことを漢字で「美国」と表現し、敬って「老美」と読んだりもする。(日本のことを小日本と蔑む事がある) 経済的背景 ・ アメリカ企業が中国で得た利益がアメリカに還流する構造(2005年で30億ドル) ・ 中国の外貨準備高は2006年10月時点で1兆ドルを突破し、世界一。その内7000億ドルが米国債と米金融資産。いわばアメリカ経済を人質にとっている。 ・ 以上から米中関係は「金融恐怖バランス」の上に成り立つ「ステークホルダー」。 中国と日本 似て非なる国 ・ 「社会主義市場経済」、「経済特区」、「一国二制度」など、中国人は本音と建前を使分け。 ・ トップダウン⇔ボトムアップ、即決⇔時間がかかる、最初に結論⇔最後、と意思決定システムが異なる。 ・ 個人主義⇔チームワーク、転職はキャリアアップ⇔会社への忠誠心、と働き方が違うため、中国人にとって働きにふさわしい報酬やポストが与えられないといった不満がある。 靖国神社問題 ・ 1972年の日中国交正常化の際、戦争責任は一部の軍国主義者にあり、日本国民も被害者であるとして、中国は戦争賠償金を放棄した。(日清戦争後の下関条約では中国から日本への賠償金額は3億5千万円(当時の中国、日本の歳入は1億円、8千万円)) ・ 侵略戦争の責任者であるA級戦犯が祀られている靖国神社を参拝することは、戦争賠償金を放棄したいきさつからも容認できない行為 ・ 中国は過去を忘れて未来志向を、日本は歴史を忘れない姿勢を持つことが必要 中国の台頭 ・ 世界の工場は完全に日本から中国にシフトし、2013年には日本のGDPを凌駕する。 ・ 格差(先進国との、国内富裕層と貧困層、農村部と都市部、内陸部と沿海部)がパワーを生む 不安材料 ・ 三つの不安「投資の過熱」「融資の過熱」「マネーサプライの過熱」 ・ 中央政府と地方政府の対立 ・ 共産党幹部の腐敗 農民から安い価格で土地を徴収し、使用権を外資系企業に売る中で、多額のリベートが横行 ・ エネルギーと資源の爆食による世界的なインフレ ・ 2030年に2億トン以上の穀物不足⇒世界的食糧危機が発生 ・ 格差問題 ・ 環境問題 感想 今年、中国はオリンピック、パラリンピックを大成功に実施した。金メダルの数も一番多く、周到な準備が実を結んだのだろう。2010年には上海万博で更なる発展を目指している。 しかし、何と言っても13億人の国にて、発展に伴う変化や傷みも大きい。 最近のエネルギー資源の高騰も中国が輸出国から輸入国になったことが大きく、次に懸念されているのが食料への影響だ。エネルギー自給率も 食料自給率も極端に低い日本が、その影響が一番大きく受ける。 遠い隣国などと悠長なことを言っていないで、中国との政治的なつながりや民間同士の経済的・文化的交流を強め、積極的に関わっていく必要がある。
重村 智計
三笠書房 (2007-10) 定価:560円 / Amazon価格:560円 ISBN:9784837976738 筆者は韓国人と朝鮮人だけが日本人にとって唯一感情が通じるというが、果たしてそうだろうか。 日本と民族的には一致して同質性のある一方で、歴史、社会、教育の仕組みの違いが異質性を大きくしている。 その違いを理解して付き合っていくことが、隣人として大切なことであり、そのために好著である。 韓国には政党が育たない。5年に一度大統領選挙が行われ、大統領候補を取り巻く新しい政党が作られる。大統領の権力は絶大なため、汚職が当たり前となり、大統領を辞めたとたんに本人や家族が逮捕される。 北朝鮮は世襲制としているが適切な後継者がいない。2000万人の小国なのに100万人もの若者を軍隊に送込んでいるために農業も工業も成り立たず、さらに国際的な金融制裁が効いて石油も買えず軍隊も機能しない。山の木を切って燃料とするものだから、大雨が降ると大水害が発生しますます疲弊する。 北朝鮮は朝鮮半島を統一するために韓国に工作員を送込んでいるが発見され射殺されるケースが増えたため、日本経由で侵入することとし、日本人パスポートを入手するため日本人を拉致した。 韓国には北朝鮮の工作員の活動が奏功したのか、左翼活動が盛んであり、金大中、ノムヒョンと続いた左翼政権が太陽政策として毎年1000億円単位で援助していた。 弊害も表面化し、例えば教育も平等主義を取ったため、金持ちの子弟は殆どアメリカの学校に逃避している。アメリカのハイスクールでの韓国学生乱射事件はその歪みの結果かもしれない。 今回の選挙で左から右に大きくふれ、イミョンバク大統領に代わったため、北朝鮮への援助は大きく削減されるだろう。 牛肉問題でかなり攻撃されているが、左翼勢力の最後の巻き返しと思われる。アメリカの北朝鮮金融制裁解除は、左翼に攻撃されているイミョンバク大統領を支えるためなのだろうか。 現状において中国・韓国は北朝鮮の崩壊を望んでいない。中国としては民主国家が隣に誕生すると、中国の体制が持たなくなる。韓国は北朝鮮の人民を食わせることはとても出来ない。 しかし、いずれ体制は変わっていく。 この国とどう付き合っていくかがわが国としても大きな課題である。
畔蒜 泰助
三笠書房 (2008-03-19) 定価:560円 / Amazon価格:560円 ISBN:9784837976684 さらにアメリカのネオコン派(新保守主義者)は、新生ロシアを抑えるため、チェチェン紛争に資金供与し、ロシア通貨危機を招く。 そんな中、プーチン大統領が就任し、オルガリヒ(新興財閥)を追放することでエネルギー資源企業を国有化し、アメリカ・サウジとテロ対策で協力し、イランに核燃料を供給し、さらにイスラエルとも友好関係を築く。 その意味において、9.11同時多発テロは米露関係の大きな転機になったのです。 米ネオコン派はポーランド経由でウクライナのNGOに資金供与しユーシェンコ大統領を就任させるが、ロシアはポーランドもウクライナも経由しない北欧天然ガスパイプラインをドイツと建設することで、ユーラシア同盟の構築を着実に進展させる。 プーチンの戦略で、資源埋蔵量世界一のロシアが、世界を動かそうとしている。 資源埋蔵量世界一のロシアとの戦略(私見) 世界で一番大きい国ロシア、日本の45倍の面積に1億5千万人弱が住む。天然ガスやレアメタルの埋蔵量は世界一、石油もサウジに次いで2位という説もある。 この国がプーチンという行動力ある天才によって世界を動かそうとしている今、対岸の北陸は好機を迎えている。 まずは、ロシアと中国と北朝鮮の国境に位置する豆満江の開発を進めることだ。 そこから、シベリア新幹線をモスクワまで引く。現在、ウラジオストックからモスクワまで約1万km 1週間かかるシベリア鉄道を、時速300km2日で結ぶ事によって、豆満江をユーラシア大陸の玄関とし、北陸はそのゲートウェイとして大きな役割を担う。 そして、シベリアと中国北部の資源開発を進める。 カザフスタンでウラン開発し、ロシアで濃縮して輸入することも考えられる。 そのためには、北朝鮮も含めた北東アジア各国の安定と協力が不可欠だ。能登は渤海との交易など昔から豆満江との交流の歴史があり、今後が大いに楽しみだ。
前田 高行
新潮社 (2008-02) 定価:714円 / Amazon価格:714円 ISBN:9784106102516 中東には世界の石油と天然ガスの半分1兆2千億バレルがあり、1バレル100ドル、1ドル110円とすると、その価値は1京3千兆円にもなる。日本の平成20年度国家予算は83兆円、GDPは515兆円だから、その156倍、25倍になる。 サウジアラビア王家 世界の4分の一の石油が眠る最大の産油国だが、まだ70年近く掘り続ける事が出来る。 第3次サウド王朝初代国王アブドルアジズには36人の王子が生まれ、現在の王子は1000人以上。 最大の建設企業を営むビンラディン(オサマは創始者の息子)など豪商が王家と共存する。 ドバイの開発ブーム 世界一の超高層ビル「ブルジュ・ドバイ」800m以上? やしの木や世界地図の形をした最高級リゾート 世界最大の屋内スキー場 ドバイ港、ドバイ空港のハブ化 エミレーツ航空 ドバイ証券取引所 王族投資家アルワリード王子 総資産2兆4千億円。 銀行、ホテル、メディア、ITに投資し30年間で築く 1991年シティバンクを救済し筆頭株主に [感想] かつては1バーレル2~3ドルだった原油価格は、1973年の第四次中東戦争による第一次オイルショックで10数ドルに跳ね上がり、1978年のイラン・イラク戦争による第二次オイルショックで30~40ドルになった。その後は20ドル前後で推移していたが、2003年のイラク戦争を機に上昇し、2008年7月には147ドルにまで上昇した。 その結果、ガソリン価格は100円台から180円台へと高騰するなど大きな影響を受け、企業収支も国家収支も大幅な赤字に転落したが、一方で産油国には膨大な富がもたらされている。 一体中東産油国はどう考え、その富をどう使っているのだろうか知りたくて本書を紐解いた。 中東にとってオイルショックとは言わず、何とオイルブームと言うのだそうだ。当たり前か。 この膨大な余剰資金が流れ込んだ市場は暴騰し、引き上げられると大暴落する。最近の気象変動と同じく、とんでもない動きをしかねない。 先が読めないけれども、アラブの考えることは分からず、予測のつかない大激変がいつどこに起きても可笑しくないな、というのが本書の感想でした。
中村 政雄
中央公論新社 (2004-11) 定価:756円 / Amazon価格:756円 ISBN:9784121501578 1971年日本が濃縮ウラン製造を国産化しようとすると、アメリカの濃縮技術を提供すると言われ独自技術開発を中断したが、実際には提供されず、日本の開発が遅れた。 1974年にアメリカの濃縮ウラン供給力の限界から、原子力発電所で副生するプルトニウムを濃縮ウランの代用に使うことを義務付けたのに、1977年になると、核拡散防止の観点から高速増殖炉実験炉「常陽」と再処理工場実験施設の試運転を延期するよう要請してきた。 ワシントンには日本とドイツにプルトニウムを利用させないことを目的に情報活動している団体が二つあり、新聞の論説委員や反原発派に、ウラン燃料は十分ある、プルトニウム利用に経済性はなくワンスルーすべき、などの情報を提供している。 ヨーロッパでの反原発運動の背後にもアメリカの影が見え隠れしている。スーパーフェニックスの反対運動ではカリフォルニアからの反対派が退去して押し寄せた。西ドイツでも原発反対運動が激化したが、ブラジルへの原発輸出認可を政府が延期すると、何故か反対運動は鎮火した。 日本が真に独立国家たるためには、何としても再処理施設を安定運転させる必要がある。 原子力は社会的関心が高いことから政争の具とされる。 スウェーデンでは1970年に一院政となり、小勢力だった中央党が原発反対をシンボルに勢力を伸ばして与党となると、推進派だった社民党も原発反対を主張し選挙に勝った。国民投票で原発の段階的廃止が決まったが、現実として廃止は延期され、原子力継続支持派が81%と増えてきている。 オーストラリアでは与党社会党がチェルナーフェルド原発の運転開始認可をすると、半年後の選挙に不利となるため国民投票に責任を持ち込み、僅差で否決された。国民はその結果に驚き、反動で社会党は圧勝した。 イタリアでは3基の原発が稼動していたが、肉体美を売り物に選挙運動して名を馳せたチチョリーナ率いる急進党が国民投票を呼びかけ、推進派だった共産党も社会党も反対に政策を変えた。その結果、フランスからスイス経由で電力輸入することになり、2003年の猛暑で大停電が発生した。今年に入って原発を推進することを大統領は表明している。 国がどうあるべきかよりも政党にとって有利か否かが論点とされるのはいかがなものか。 原子力の事故は事件になりやすい 1974年に原子力船「むつ」が実験航海に出た時に、原子炉熱出力1.4%で微量の放射線が出て大ニュースになり、帰港できないどころか最終的には廃船になってしまった。 直接原因は上部の遮蔽不足だが、漏れた放射線量は腕時計の夜光塗料から出るくらいの微弱なものであり、人にも周辺海域にも全く問題がない。 実験航海だから、問題を出し尽くして改善するのが目的のはずだが、事故が事件になり、日本が原子力船を運航させる機会を永遠になくしてしまった。 1981年に敦賀原発で浦底湾の海藻からコバルト60などの放射性物質が検出された時にも、人への影響は全く考えられないレベルだったにもかかわらず、通産省が真夜中に「明朝6時に重大発表がある」と言ってマスコミを召集したため、事故が事件になり、風評被害まで発生した。 いずれも、リスクが全くないような事前説明と、影響レベルの伝え方に問題があったと思われる。 日頃からの情報公開とリスクを分かりやすく説明することが求められる。 報道のあり方 かつて日露戦争終結後のポーツマス講和会議において、サハリンと遼東半島が割譲され賠償金が得られなかった時に、マスコミは戦争継続して賠償金や領土の拡張を主張した。しかし、疲弊していた日本にとって戦争継続は出来る状況ではなく、その状況を淡々と伝え講和条約の妥当性を論じた国民新聞は非難され、潰れてしまった。 問題は国民が国の疲弊している実態を全く知らなかったことにあり、マスコミも真実を伝えることより読者の求める刺激を提供しようとしたことにある。 ドイツで風力や太陽光が推進されている事や19基ある原発の段階的廃止に合意したことが報道されても、実質的に廃止スケジュールは未定であることも、ドイツの電力会社が国外の原発新設に投資していること、フランスの原発からの輸入に頼っていることなどは全く報道されない。 やはり、日頃からの情報公開と情報提供が必要ですね
塚原 晶大
日本電気協会新聞部 (2006-07) 定価:1,260円 / Amazon価格:1,260円 ISBN:9784902553352 経済的にはワンススルー政策(再処理せずに埋める)のほうが合理的とも言われてきたが、ペットボトルなどと同じで、安いからリサイクルするのではなく、ゴミを資源として有効活用し廃棄物を減らすこと、プルトニウムが軍事転換されないよう減量化を図ることを目的とすべきであり、ワンススルーを採用していたアメリカも転換しつつある。 さらには、資源価格の高騰から、再処理が経済的にも必要とされるようになって来た。 アクティブ試験が開始されているが、エネルギーをめぐる大きな国際政治の流れの中で、日本が自立していくためにも早急な核燃料サイクルの確立が望まれる。 年表 1945年~1953年 アメリカは核技術の独占を目指す「閉じ込め政策」 1954年 アイゼンハワー大統領による「アトムズ・フォー・ピース」演説で「開放政策」に。 1977年 カーター大統領プルトニウム利用の凍結政策発表。再び「閉じ込め政策」が30年続く。(失われた30年) 1980年 ウィーンでのINFCE(国際核燃料サイクル評価)で日本の核燃料サイクル路線の必要性が認められる。 1981年 鈴木首相とレーガン大統領による共同声明「東海再処理工場の運転合意」 1984年 青森県と六ヶ所村に電事連が「三点セット」の立地申入れ 1985年 青森県、六ヶ所村、日本原燃が「原子燃料サイクル施設立地への協力に関する基本協定書」締結 1993年 再処理工場着工 2002年 燃料貯蔵プールでの不良溶接291箇所確認。品質保証と情報公開の徹底。 2003年 エネルギー基本計画 2004年 原子力開発利用長期計画で核燃料サイクル政策維持。青森県、六ヶ所村、日本原燃が安全協定調印。ウラン試験開始~2006年。 2005年 アメリカで包括エネルギー法が成立。原子力発電の再開、核燃料サイクルの開発へ 2006年 再処理工場アクティブ試験開始
有馬 哲夫
新潮社 (2008-02) 定価:756円 / Amazon価格:756円 ISBN:9784106102493 正力はメディアを一挙に手中に入れるためマイクロ波通信網を構築しようとし、アメリカも共産主義勢力に対抗するためCIAを中心として正力を応援した。正力はそれを実現するために、衆議院議員となりさらには総理大臣を目指した。 1924年 読売新聞買収 1953年 日本テレビ放送網株式会社開局 1955年 衆議院議員当選 その頃に、アメリカの原子力平和利用政策への転換があり、正力としても原子力発電を手に入れれば財界と政界に大きな影響力を持つことが出来ると考え、メディアを活用してキャンペーンを行った。アメリカとしても原水禁運動や第5福竜丸被爆事件による反米感情を抑えるためにも原子力平和利用キャンペーンを張る必要があった。 1953年 5月原水禁運動始動、3000万人もの署名を集め戦後最大の反米運動に 1953年 12月アイゼンハワー大統領「アトムズ・フォー・ピース演説」平和利用への転換 1954年 読売新聞が原子力平和利用をテーマに「ついに太陽をとらえた」の連載開始 1954年 第5福竜丸事件 アメリカは平和利用と並行に軍事開発を進めていた。 1955年 米原子力平和使節団来日「原子力平和利用懇談会」設立「原子力平和利用博覧会」開催 1956年 総理府原子力委員会発足 正力が初代原子力委員長に就任 1956年 英からJPDR(コールダホール型原子炉)導入を表明(1963.10.26発電開始 原子力の日) [感想] 富山生まれの正力松太郎氏は読売新聞社や巨人軍のオーナーとは知っていたが、原子力の父だったとはこの本を読んで始めて知った。無知蒙昧を改めて恥じるところです。 プロ野球、ディズニーランド、柔道振興、原子力推進など、正力氏がおられなかったらどれもかなり実現は遅れていたことだろう。正力氏が総理大臣になるために原子力平和利用に取り組んだとあるが、資源のない日本は原子力平和利用により立国していくべきだという強い信念の基に強力に取り組まれたのだと思う。自分の為もあったかも知れないが、日本はかくあるべしと言う大きな夢を描き、それを自ら実現していく強い意志と実行力に大いに学びたい。 [参考(正力松太郎をWikipediaで検索)] [人物] 読売新聞の部数拡大に成功し、「読売中興の祖」として大正力(だいしょうりき)と呼ばれる。 日本に於ける導入を推進したことで、プロ野球の父、テレビ放送の父、原子力の父とも呼ばれる。 [編集] 年譜 明治18年(1885年4月:富山県射水郡大門町(現射水市)に土建請負業を営む父・庄次郎、母・きよの次男として生まれる。 明治32年(1899年)4月:旧制高岡中学(現富山県立高岡高等学校)入学。 明治37年(1904年)9月:第四高等学校入学。同級生に河合良成(小松製作所会長)、品川主計(読売ジャイアンツ代表)など。 明治39年(1906年:三高との高専柔道の対校戦に優勝。この時、団体戦で四高は三高に押されて負けムードが漂っていたが、大将である正力が巴投で二段の相手から逆転の一本勝ちをし、四高は優勝した。なお、この時正力自身は白帯だった。 明治40年(1907年)7月:東京帝国大学法科大学独法科入学。河合、品川のほか、重光葵(外相)、芦田均(首相・外相)、石坂泰三(経団連会長)などが同級。柔道に打ち込んだ。 明治44年(1911年)7月:東京帝大卒業。 内閣統計局に入る(同郷の南弘の推薦による)。 大正元年(1912年)11月:高等文官試験に合格。 大正2年(1913年)6月:警視庁入庁、警務部警務課勤務。警視総監・安楽兼道の義理の姪にあたる前田布久子(鹿児島出身)と見合い結婚したが一女をなしてまもなく亡くなる。その長女は8歳で早世した。 大正3年(1914年)6月:警視に任官、日本橋堀留署署長。 大正4年(1915年):吉原波満と再婚。 大正6年(1917年)2月:牛込神楽坂署署長。 9月:警視庁第一方面監察官。 大正7年(1918年)10月:米騒動鎮圧の功により従六位に叙せられる。 大正8年(1919年)6月:警視庁警務部刑事課長。 大正10年(1921年)6月:警視庁官房主事。7月:正六位。兄定吉方より分家して一家を創立する。 大正12年(1923年)9月:関東大震災において「朝鮮人暴動の噂」を流布させる。昭和19年(1944年)、警視庁での講演で、この虚報を「失敗だった」と発言(石井光次郎著『回想八十八年』)。 10月:警視庁警務部長。虎ノ門事件。 大正13年(1924年)1月:虎ノ門事件を防げなかった責任を問われ懲戒免官。直後、摂政宮(のちの昭和天皇)婚礼により恩赦。読売新聞の経営権を買収、社長に就任。 昭和3年(1928年):京成疑獄事件に連座、禁固4ヶ月、執行猶予2年の判決をうける。 昭和9年(1934年):大リーグ選抜チームを招聘、巨人軍創立。 昭和10年(1935年)2月:読売新聞社前で暗殺未遂。首を斬りつけられ重傷を負う。 昭和19年(1944年)5月:貴族院議員に勅選される。 10月:小磯内閣顧問。 昭和20年(1945年)10月:第1次読売争議。12月:A級戦犯に指定され、巣鴨拘置所に収容。 昭和21年(1946年)1月:公職追放 昭和22年(1947年)9月:不起訴、釈放。 昭和27年(1952年)10月:日本テレビ初代社長に就任(1955年まで務める)。 昭和28年(1953年)8月:日本テレビ放送網本放送開始。 昭和30年(1955年)2月:富山2区から衆議院議員選挙に出馬、当選。11月:第3次鳩山内閣で北海道開発庁長官兼原子力委員長。 昭和31年(1956年)5月:科学技術庁設置により初代長官。 昭和32年(1957年)7月:第1次岸内閣改造内閣で科学技術庁長官兼国家公安委員長。茨城県東海村で日本初の原子炉稼動。 昭和36年(1961年):武道会館建設議員連盟会長。 昭和37年(1962年):財団法人日本武道館初代会長。駒澤大学より名誉博士号を授与される。 昭和39年(1964年):勲一等旭日大綬章を受章(没後、旭日桐花大綬章追贈)。 昭和40年(1965年)6月18日:高岡市名誉市民。6月26日:大門町名誉町民。 昭和44年(1969年)10月9日:国立熱海病院で死去。柔道八段から十段に。 [警察官僚時代] 警視庁官房主事として大正12年(1923年)6月の日本共産党第1次弾圧や、同年9月の関東大震災に乗じた社会主義者弾圧を指揮した。直後、警務部長となるが、摂政宮狙撃事件(虎ノ門事件)の責任を問われ、懲戒免官となる。恩赦により懲戒処分を取り消されたものの、官界への復帰は志さなかった。 [新聞経営] 大正13年(1924年)、番町会グループである郷誠之助、藤原銀次郎ら財界人の斡旋と、帝都復興院総裁だった後藤新平の資金援助により、経営不振であった読売新聞社の経営権を買収し、社長に就任した。正力は、自社主催のイベントや、ラジオ面、地域版の創設や、日曜日の夕刊発行などにより部数を伸ばした。 [大リーグ招聘] 昭和9年(1934年)、ベーブ・ルース、ルー・ゲーリッグらが参加したアメリカ大リーグ選抜チームを招聘した。アマチュア野球しか存在しなかった日本側でも全日本チームが結成された。後に同チームを基礎として大日本東京野球倶楽部(現讀賣巨人軍)が創設され、昭和11年(1936年)の第1回職業野球日本リーグに参加した。 正力は最初期と戦後の一時期を除いて巨人軍のオーナーを務め、また、巣鴨プリズンから釈放後の一時期、職業野球連盟の総裁(今で言うコミッショナー)に就任した。このような正力の業績を称え、日本プロ野球界に貢献した関係者を対象に、毎年正力松太郎賞が贈られている。 [襲撃事件] 昭和10年(1935年)、本社玄関前で暴漢に左頸部を斬りつけられ重傷を負った。直接の実行犯の長崎勝助は右翼団体武神会の構成員(元、警視庁巡査)。取調べに対して、犯行に及んだ理由として、読売新聞が天皇機関説を支持したこと、正力が大リーグを招聘し、神宮球場を使用し「神域を穢した」ことなどを挙げた。だが、捜査・公判の進行により、競合他社東京日日新聞の幹部による指示があったとされた。 [遺訓] 正力は巨人軍に対して、巨人軍憲章とも呼ばれる遺訓を残している。遺訓は以下の3つ。 巨人軍は常に紳士たれ 巨人軍は常に強くあれ 巨人軍はアメリカ野球に追いつき、そして追い越せ [系譜] 正力氏 正力という姓は嘉永年間に庄助が発案した鉄の金輪・正力輪から始まっている。この金輪は河川の氾濫で流れた古橋の抗を抜くための道具として効力を発した。庄助の一族は代々一介の庶民に過ぎなかったが、発明の功労により加賀藩奉行から苗字帯刀を許され「正力氏」を名乗るようになり、地元の名門として名をなした。 プレジデント社 (2003-04) 定価:1,050円 / Amazon価格:1,050円 ISBN:9784833490931 首藤さんは政府の委員会などで活躍されていると聞いていたので、どんなすごい人かと思っていたが、お会いするとスリムで素敵な女性であり、話もとても分かりやすい。 スペースシャトルチャレンジャーは約22年前、発射直後に爆発事故を起こし、7人の乗組員が亡くなった。 ブースターロケットのジョイント部分に使われているOリングは低温で硬化し所定の働きをしない。打ち上げ当日、フロリダは-2℃と通常より13~14℃低い異常低温に見舞われ、Oリングメーカーは打ち上げ中止すべきという意見を出していた。 しかし、打ち上げは強行された結果、燃料が漏れ、空中で爆発してしまった。 なぜ強行したか。 ①今までにも燃料漏れは何回もあったが問題がなかった。 ②大統領との宇宙からの交信が予定されていたし、今までも問題がなかったから大丈夫と判断した。 安全は小さなことを最初に許すと、だんだんと許容範囲が大きくなり、大きな事故につながってしまうのです。 デュポン社では事故の発生が大変低い会社として有名です。 ・扉はすべて向こう側にいる人が認識出来るスリガラスを入れる。 ・会議をするときに、まず、非常口の説明をする。 ・階段の上り下りでは必ず手すりにつかまる。 ・工場で爆発事故が起きたら、工場長は家族とともに工場内に住む。 ・工場見学者に「今、負傷事故が置き、無災害記録がストップした」とその場で発表する など徹底している。 大切なのは、デュポン社は、安全規則を守らない社員は解雇するなど安全遵守を絶対とするとともに、安全は引合う仕事(Good Business)であるとする安全文化を構築していることです。 安全第一、安全最優先と言うと、安全は経済性、生産性、効率などと対極にあるもののように考えがちですが、同じベクトルであるべきであり、すべてが一体になって、会社経営も社会も成り立つものです。 安全文化のために必要なことは 1.「よいルール」を作る 本当に常に守れるか、 例外は認めず、遵守は絶対 重要なものを特定し、やめる勇気も大切 2.ルールを周知・徹底する 知識として教育し、上が率先して守る。 どのようにやるかを決め、訓練する。 3.遵守状況を確認する 「鬼ごっこ」ルール、「ありがとう」カードなどの相互指摘 見つけたら必ず指摘する。 4.遵守状況を評価 褒める所は褒め、罰すべきときは必ず罰する。 1~3を確認し、ルールや教育・訓練方法を見直す + 遊び心、お茶目さ 楽しくなければ守りたくない、守れない といった内容の講演でした。 安全は収益の対極にあるものではない、という話には大賛成です。 レスター・ブラウンが「エコ・エコノミー」という本で、環境問題はコストとして考えるのではなく、収益の向上と同じベクトルで考えることが出来ると書いていますが、安全も同じだと思います。 何かを切り捨てて安全を守るのではなく、すべてを満足させ、そして楽しく、安全文化を醸成していきたいものです。 首藤先生からのコメント 以上の内容をブログに載せたところ、首藤先生から次のコメントを頂きました。 昨日は、お世話になりありがとうございました。1点だけ、デュポン社の工場長が工場敷地内に済むのは、事故が起きたらではなく、起こす前からです。それと、これはずいぶん昔の話で、さすがに現代はそのようなことはしていないと思いますので、お間違えなく! 皆様が、明るく楽しく安全文化を構築されますよう、期待しております!
吉田 道雄
ナカニシヤ出版 (2001-12) 定価:1,890円 / Amazon価格:1,890円 ISBN:9784888486620 九州のバス会社で安全に関する講習会を実施。一人で参加した人は若干の効果があったが、グループで参加した人たちには絶大な効果が見られた。 「お、やっとるか」とお互いに声を掛け合って、知識を意識に高め、行動を継続することが大切。 《私も前の会社で次の経験をした。 一般向けの営業を拡大するために、地獄の特訓として有名な研修機関に社員を派遣したところ、朝の挨拶や体操からして見違える姿になった。しかし、それも一週間以内に元に戻ってしまった。周りが元のままなので長続きしないのだ。これではだめだと判断して第二段を送り込んだ。帰ってきてから最初の経験者と一緒に元気な声を出してくれる。でも、守ったのは二週間くらいだったかなー。しょうがないので、繰り返し派遣したところ、ようやく継続するようになった。どんな活動も職場全員の取り組みとしなければ長続きしないものだと思う。》 組織安全のキーワード PHS P Peace 平和 H Happiness 幸せ H Health 健康 S Safety 安全 S Smile 笑顔 リーダーシップと安全 リーダーがP(目標達成行動)とM(集団維持行動)を明確に実践してこそ、Morale(士気、意欲、満足度)が上がり、Moral(倫理観、道徳意識)も向上し、事故が減少する。 ハードと人間のミスマッチ 新幹線は踏切事故がない。踏切がないから。 同じようにハードだけで対策できることはほとんどない。 取組み一人一人が仕事の意味づけを理解し、責任と誇りを持って取り組むことが大切。 No blame culture 問題点を報告したら叱るのではなく誉める。(何でも言える文化を醸成) 組織を脅かす悪魔の法則 第一の悪魔 慣れ 注意力が低下 第二の悪魔 経験の誤った評価 今まで捕まっていないからこれからも大丈夫 第三の悪魔 記憶と忘却 レアケースがいつの間にかよくある事に 第四の悪魔 マニュアル違反でも事故らない だから無視しても大丈夫 第五の悪魔 マニュアルを守っても事故る 守ってもしょうがない 仕事と小集団活動 忙しい仕事に小集団活動を付加すると空回りの歯車になる。 忙しい仕事の中に小集団活動を取り込むと、仕事を回す小さな歯車になる。 MPシステムのすすめ 職場内を回遊する担当(Migratory Person)を決めて、他の職場を歩き回らせ、疑問に思ったり感動したことなどを中心に対話を進めていく。 相互理解が深まって風通しがよくなるとともに、外からの目で違った改善が進む。 仕事に誇りを 癌で絶対に死なない方法は、癌になる前に死んでしまうことだ。 ミスや事故を根絶する方法は、仕事をしないことだ。 これは、ありえない。 ミスや事故の可能性を持ち続ける仕事は、かけがえのない仕事をしている証であり、誇りを持って取り組み続けたい。
樋口 晴彦
祥伝社 (2006-06) 定価:777円 / Amazon価格:777円 ISBN:9784396110444 くそみそ理論 くそと味噌を混ぜるとくそ(全く使えない物)になる。 守らなくても問題のない基準が多いと、守らなければ大変なことになる基準もないがしろになる。 つまらない会議が多いと、大切な会議のレベルも下がる。 味噌にくそが混ざらないように、基準も会議も厳選していきたいものだ。 『紙』様信仰 組織が官僚化すると、規則や報告書などの文書類が増加し、本来の現場管理に傾注出来なくなる。 はんこの数が多いと、決定までに時間がかかるだけでなく、真剣に見る人がいなくなる。 大切なのは、誰が責任者かを明確にし、責任者が設備の発する声を現場で聞いて、責任を持ってやり遂げることだと思う。 紙とはんこの数を半分にし、現場に行く時間を今の倍に出来ないものだろうか。 高名の木登り 木登りの名人が弟子に高い梢の枝切をさせた時、高いところでは何も言わなかったのに、地上に降りる直前に「注意せよ」と声をかけた。 慣れて安心する頃が一番危ない。 新人は規則を呼んでから仕事に取り掛かるが、ベテランは規則を読まずに今までのやり方で実施することが多い。規則が変わっていた場合は大変な事になる。周りの人も新人には注意してもベテランには言い難い。ベテランや上司こそ気をつけて行動したいものだ。 小田原評定 北条家は打って出るか、篭城するかと延々と会議をしている内に、機を逃して滅びてしまった。 会議に出席する一人ひとりが、「これは俺の責任だ」と難題を背負ってやり抜く野武士集団であって欲しい。 グループシンク チャレンジャー号は、燃料漏れを起こしたパッキンが危ないとメーカーは分かっていながら、遅れがちな発射スケジュールを取り戻そうと言う雰囲気に呑まれて言い出せず、爆発してしまった。 トラブルが発生すると、たくさんの人が集まって会議を行う。情報を共有し英知を結集するために必要なのかもしれないが、実際に発言するのはごく一部に限られる。 さらに偉い人が出席し発言すると、反対意見も出にくく、流れて行く。 本当に有用な会議とするために、出席する一人一人の「俺はこれに責任を持つ」という意識が欠かせない。 ロシアンルーレット JCO事故は、効率化のために少しルールを緩め、前は問題なかったから次はもう少し緩め、というロシアンルーレットの連続だ。 ルールを少し緩めて実行する事が必要なら、専門家がきちんと判定してルール自体を変え、ルールを遵守する事だ。 後部座席のシートベルトも面倒くさいけれど、ルールになった限りは守っていこう。 責任なければ無責任 美浜事故は「情報を隠したりはしないが、登録漏れがあっても積極的に説明しない」というアウトソーシング特有の問題から起きた。 アウトソーシングすると関係者の間で情報や認識がなかなか共有されにくくなるが、そのギャップを埋めるのも道義的責任や法的責任を取るのも、発注元である電力会社だ。 「任せてあるから大丈夫」ではなく、どういった業務をどう実行するのか、どうチェックし、どう報告されるか、をしっかりと認識した上で発注していきたい。
中谷内 一也
日本放送出版協会 (2006-07) 定価:1,019円 / Amazon価格:1,019円 ISBN:9784140910634 一.信頼とは 電気事業の資産は何か? 発電~流通に至る膨大な設備は、総額数兆円にもなる貴重な資産です。 しかし、設備以上に大切な資産は、お客さまとの信頼関係。 管内すべての会社、家庭との取引があり、地域の皆さんのご理解を得て発電し、公道や人の敷地を使わせて頂いて、電気をお客さまにお届けしています。 この電気事業のためには、お客さまとの信頼関係がなければ、遂行していく事は不可能です。 当社にとって欠くことのできない最大の資産は、お客さまとの信頼関係なのです。 二.信頼は回復出来るのか 『信頼の非対称原理 信頼を築くのは難しく崩壊するのは簡単』 発電設備における不適切な対応で地に落ちてしまった信頼関係は、回復出来るのでしょうか。 あまり信用していない人に頼まれて、嫌々ながらお金を貸したとしましょう。 その人が約束を破ってお金を返さなかった時は、いくら「心を入れ替えてきちんとやります」と宣言しても、再びお金を貸す人はいないでしょう。 信用力のある保証人をつけるか、担保があれば、再び貸してくれるかも知れませんが、根本的に信頼が回復した訳ではありません。 たった一回の約束違反で信頼は失われてしまいますが、信頼を回復するためには、心を入れ替えて自主的にきちんと取組む、長い年月をかけた実績の積み重ねが必要なのです。 信頼とは人と人との歴史なのです。 三.信頼は何で決まるのか 『情報の非対称性 リスク情報の発信者と受信者との間には大きな情報の非対称性が存在する。』 マンションを買うときに、耐震計算書を審査して選ぶ人はまずいないでしょう。 売り手と買い手の間には、大きな情報ギャップがあるのですが、信頼があれば安全は大前提として値段交渉になります。 信頼とは「当該リスク問題を任せておいてもまずい事にはならないだろうと期待すること」です。 任せられるためには専門知識や経験・資格などが備わっていると見なされるかどうかの「能力についての認知」と、公正な立場から情報を発信しているかどうかという「動機付けについての認知」が必須です。 自分に都合のよい情報だけを発信したり、リスクが低く見えるように加工すると、動機が不純だと見なされ、信頼関係を築くことは出来なくなります。 有利不利に関わらず、公正な情報を出し続けることが、信頼関係を築く第一歩です。 四.信頼の本当の要因 『主要価値類似性 相手と同じ価値を共有していると感じると、その相手を信頼するようになる。』 能力ある人が公正な情報を出し続ける必要性を説明しましたが、そうすれば皆から信頼を得られるのでしょうか。 実は、いくら正しい情報でも、違う価値観を持っている人には通用しません。 「ガソリン税を25円下げるべきだ」と言われても、道路をもっと整備して欲しいと思っている人は賛成しません。 同様に、何かあったときだけ会社側からの一方的な説明をされても、聞いて頂き、納得頂ける事は出来ません。 同じ町に勤務し、住民として同じ価値観を持って、聞く人の立場に立って説明する事が、信頼を頂くための第一歩です。 地元の事を知り、地域の素晴らしい施設を利用し、文化や名産品を楽しみ、日頃から多くの人と交流して行く事が大切です。 人と人との信頼関係には同じ目線に立つ事が必要なのです。 五.ゼロリスクか否か 『リスクを過大視する心の仕組み 微少リスクとゼロリスクの間には心理的に非連続な差がある。』 宝くじを1枚買った人は、百枚買った人に比べて当たる確率は百分の一ですが、当選する事を期待し、抽選日を心待ちにします。非常に低い確率領域では、当たる確率ではなく、宝くじを買ったか買わなかったかが気持ちのうえで問題になるのです。 逆に、リスク情報は、被害を与える確率がいくら低くても、ゼロでなければ心配され、風評被害が起こったりします。 原子力発電所から事故で放射線が出たときに、放射線の線量がいくら低かろうと、大きな社会問題になります。 リスクは十分低い、ではなく、ゼロであることを期待されているのですが、物事が存在する限りリスクをゼロにすることはできません。そのことをどう分かりやすく正確に伝えていくかが大切な課題なのです。 六.見えない物は理解しにくい 『未知性因子 観察できないリスクは将来の大きな被害の予兆と評価されやすい。』 自動車事故は年間約100万回発生し、毎年1万人弱の方が亡くなっているにも拘らず、その便利さと比べてしょうがないかと受け入れられています。 それに比べて、中国製の冷凍餃子によって10人入院しただけで亡くなった人はいませんが、農薬混入経路が分からず、もしかすると拡大するかもしれないという不安により誰も食べようとはしません。 車を止めれば不便だけれど、冷凍餃子がなくても他の食べ物で不自由しないのも、結果に影響しているのでしょう。 要するに、リスクと効用が明確なものは、多少のリスクがあっても自分で取捨選択するのですが、不明確であり代替手段のあるものは、リスクが少なくても避けられます。 放射線や電磁波は目に見えなく認識しにくいものですから、小さなリスクも過大にとられがちです。 見えないものをどう分かりやすく説明していくかが、大きな課題です。 七.自分で判断できるように 『専門家がもたらすリスク不安 決定的な証拠がない限り研究者は結論を出さない。』 リスク影響が実際には無くても理解されにくいならば、専門家に客観的に評価いただき、説明してもらえば良いのではないかと思うのですが、逆に混乱することがあります。 専門家は決定的な証拠がない限り断定的な結論を出さないことが多く、「確率は非常に低いが・・の可能性は否定できない。」のように説明されると、かえって不安な気分にさせられます。 また、専門家ごとに研究している手法が違うため、結果についてもいろいろな見解が出され、意見の相違が解消されることはほとんどありません。 「明日の天気は晴れの可能性が高いのですが、雨の降る可能性も否定できません。」と言われたら傘を持っていけば良いのかどうか迷いますが、「雨の降る確率は10%以下です。」と言われると、自分で判断出来るようになります。 専門家からは出来るだけ定量的に説明頂き、情報の受け手が自分で判断出来る尺度を持つ仕組み作りが求められます。 八.マスメディアの宿命 『報道のスタイル マスメディアは最悪のリスク情報を強調する。』 あるリスクが安全か危険かを論じる専門家の意見が分かれているとき、メディアは両論を併記すればよいのですが、読者は「どうすれば良いのだ」と戸惑ってしまうでしょう。 「安全だ」と書いて、後でリスクが現実化すれば、メディアは批判されますが、「危険だ」と知らせて後で安全だと分かった場合は、「心配したけど何もなくてよかったね」で済むかもしれません。 そのため、メディアは最悪のリスク情報を強調し、悲観的な報道をしがちです。 ですから、その報道スタイルを理解したうえで、的確に情報を発信していく必要があります。 中谷内先生の提唱する「リスクのモノサシ」を作り、日頃から発信し認知していただくことにより、メディア情報の出され方と、情報を受け取る側の理解が的確なものとなっていくと期待されます。 事故やトラブル時の情報の出し方も重要ですが、日頃からの情報発信が一番大切なのです。 九.「あるか・ないか」ではなく程度 『リスクのモノサシ 予測される被害の大きさや緊急性に応じた対応を目指すべき』 リスクは100%から1%に下げることは可能でも、物が存在する限り発生確率をゼロにすることは出来ません。また、存在する何らかのメリットがあります。 お酒も飲みすぎると身体に毒ですが、少量ですと百薬の長ともてはやされるように、その兼ね合いをどうするかが、社会と個々人の選択です。 その尺度として中谷内先生は「リスクのモノサシ」を作ることを提唱しておられます。 「説得を目的として恣意的に作られたものでないこと。他のなじみのある災害との対比により理解しやすいこと。統計的に安定していること。」などの条件をもとに、第三者で作って頂き、情報の受け手が理解でき判断出来るようにします。 大切なのは、リスクが発生してからモノサシを作るのではなく、何も無いときに作っておき、それに基づいた情報を発信しておくことなのです。 十.あくまでも日頃が大切 『安全と安心 安全は現実の状態、安心は心の状態』 中谷内先生のご講演と「リスクのモノサシ」を参考にリスクと信頼について考えてみましたが、結論はやはり日頃が大事だということです。 日頃から信頼関係を築き、公平な「リスクのモノサシ」に基づいた情報を発信し続けていかないと、万が一リスクが発生したときに話も聞いて頂けず、理解にはとても至りません。 そして、一方的な話ではなく、相手の価値観を踏まえた双方向な対話をしていかなければいけません。 真摯に、謙虚に継続的に取組み続けて行かなければと決意するものです。 中谷内先生、ご指導ありがとうございました。 中谷内先生からコメントを頂きました。 電力事業に携わる皆さんは日本有数の技術者集団です。その誇りを胸に抱きながら、一方では、相対するお客様は技術者ではなく、感情を持った生活者だということを忘れないようにしましょう。まず、相手の話に耳を傾け、感情を理解することが、こちらの話を聞いていただくための第一歩なのです。 |
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