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辻 隆太朗
/ 講談社
(2012-02-17) /
819円
/ ISBN:9784062881463
だがふとしたきっかけで「それはただの娯楽だ」と気づくようになる。そのきっかけとは簡単だ。社会人デビューし、仕事をこなしていく中で「中枢」と呼ばれる場所や人々にアクセスする機会が増えていくことである。 僕も小さな業界で長らく仕事をしていて、毎月のようにその「業界を牛耳っている連中」と呼ばれる人々と会って酒を飲んだりするようになった(もしかしたらすでに僕がその連中にカウントされてるのかもしれない)。そしてもちろんそこに大仰な陰謀みたいのは存在しないことはすっかり確認済みである。いやむしろその逆で「なーんだそんなもんか」と拍子抜けするレベルでものごとは決められ、進行していく現場を眺めていたりする。世の中で陰謀と思われているものの大半は、たまたま声の大きな人にただ流されてるだけのだらしのない議論、あるいは場の雰囲気だけで消極的に決定していく非生産的な議論、そして自己保身のためだけに失態の隠蔽を繰り返すなどの程度の悪い行為にたいそうな理屈をつけたばかりに馬鹿馬鹿しい議論であったりするのだ。 でもたまにどこかの地方都市に出かけ、一匹狼的に仕事をこなしている業界人と飲んだりすると、ふとした拍子に「やっぱりこの業界も一部の連中がすべて計画通りに・・」みたいな逸話を聞かされるケースが多かったりするのである。えらくスケールの小さな話しなのだが、事ほど左様に陰謀論は「実際に対面したことのない」関係性から拡大解釈と後付の理由によって膨れ上がるもんだ、というのが私の素直な考えである。 さて本書に戻るが、日本(オウムと東日本大震災)、ユダヤ、フリーメーソン、イルミナティ、そしてアメリカのキリスト教原理主義を題材にそれらに見られる陰謀論が実は同じルーツをもち、同じ論本で、同じ病理をもって紡がれていることを証明していく。表現は少し硬いが、ちょっとでも上記の説を見聞きしたことのある人間であれば爽快に読み進めていくことができる。客観的に読む分においてここに展開される話はいたって正常かつニュートラル、なんの違和感も持たずにするすると入ってくる話なのである。 だがしかし。去年の3.11以降の僕らはどうであったろうか。原子力ムラ、東電、民主党、菅政権といったキーワードに「陰謀」の匂いを結びつけた論に飛びついたり、「拡散」したりして来なかったろうか。いや、存分にしました^_^; それは著者も認めているとおりああいった状況では少しでも疑わしい問題を提起し、解決のために議論することは必要だったことだわけで、少し反省しつつも振り返って方向転換するほどのことはあるまい。 だがしかし。1年を経過した現実において我々はすこしその態度を変えていくべきではないか、とも思うのだ。確実な悪が存在する。邪悪な思想で善良な市民に迫ってくる。我々はそれに抵抗せねばならない。それは今だ。今を逃すと大変なことになる。・・・それってすべて本書が述べる陰謀論の要件にぴたりと当てはまるのである。原発の被害を過小評価することで県民をわざわざ汚染地にとどめ人体実験をしようとしている・・・放射性瓦礫をあえて国内に運んで燃やすことで日本人を滅亡させようと画策している連中が政府を牛耳っている・・・なんだかもうどうなってんだって気がしてくるのだが、でもネットの中ではますます勢いをもって全国の純朴な(ネット慣れしてこなかった)人たちが、シェア!拡散!と活動しているのが哀しいかな2012年の日本の現状だ。 厄介なのは自己正当化だ。過去に自分が述べたり、指示した説との誤謬を認めたくないだけで、逆に攻撃的に周囲から孤立していく例を数々見受けるのが2012年のネットシーンでもある。でも僕らは自由なのである。自分の思ったことを、その都度考えて発信していこうではないか。朝令暮改など怖くもない。それを恐れてしまうとそこに陰謀論への落とし穴がぱっくり口を開けていることを知っておきたい。 もうひとつ。陰謀論は常に「言い切る」。断言するのだ。だから僕はネットでみかけるいろんな説を評価する際、「断言調」には眉唾で読むようにしている。特に原発関連のことなんて、誰にも断言できる根拠など無いはずだ。皆がわからないなりに模索を続けている現状において、断言調で発言を続ける人間は、相当やばい。気軽に信用してはならない。これは断言できる(笑) 忙しい人は最後の6章だけでも読むと良いです。特にネットで発言する機会の多い方、たとえ陰謀論を信じていても、「いわゆる陰謀論的な語り口」をだけでも社会的信用を失ったりすることはやっぱりありますんでそのためにも手にしてみてください。
瀧本 哲史
/ 講談社
(2011-09-22) /
1,890円
/ ISBN:9784062170666
日本のエリートたちは本当にこんな底の浅い話に夢中になっているのだろうか。そうでないことを願いたい。 「本物の資本主義」などといった軽率な言葉が繰り返されるまでには、いったいどれだけの論考があったことだろう。重たい原書を読み漁ったり、著名な経営者にインタビューしたり、数々のデータを並べて比較検討する作業から結論づけられて良いはずがない。「本物の」などといった言葉を使う以上、それは自らの体験に即した身体感覚から得られたものでなければならないのだと思う。もちろん僕だってそんなことは分からない。だから、断定調で世の中のことを教えてあげる、あるいはこれだけ知っておけば武器となるからさあ頑張りたまえ、だなんて口調で語るなんてことは、僕にはできないしやりたくもない。 筆者はきっとそれなりの戦略を持ち、若者を啓発するための道具としてこのような書物を書き、戦略的な考えで世にに出したのであろう。そう願いたい。まさか本人がこの本を読んだり彼の話を聞いたりした若者が本当にそれで成功するだなどは信じていないに違いない。もしそうだとしたら、とんだ投機家だ。
たくき よしみつ
/ 講談社
(2011-10-14) /
1,680円
/ ISBN:9784062173193
メディアやネットを通してしか知ることのできなかった311以降の現地でいったい何が進行していたのか。そしてそれはその後どのような方向に動いているのか。本書の刊行は昨年9月なのでそれ以降については書かれていないが、村をめぐる状況が改善しているとは思えない。なぜならそこに打倒すべき「悪役」の姿が容易に特定できないからだ。 「善意と正義」から出発した意識がいつのまにか欺瞞の色に染まっていっても、それを止めることができなかった社会が原発を推進し、そして破滅させた。その意識が日本政府や東電、経済界のみならず受け入れた現地の自治体や住民をも巻き込んでいたことは開沼博氏の「フクシマ論」に描かれたことを裏付る。本書の直前に読んだ鈴木智彦著「ヤクザと原発」にて告発されていた多くの事柄がここにも登場し、それらが単なるうわさ話ではないことを僕に訴える。 原発のすぐ近くでありながら奇跡的に東京並みの線量という川内村での生活をつづけ、そこから情報を発信していこうという覚悟を決めた著者を誰も非難することはできないはずだ。 傍観者の僕らは出来事の中心から離れれば離れるほど、つい「味噌も糞も一緒」的な論理に囚われてしまう。声高に「フクシマは終わった」「東日本からすぐに避難すべき」「浜通りに最終処分場を置くべき」と叫ぶことの滑稽さに気づかせてくれるのも彼の決断あってのことだろう。 これだけの災害に直面しながら、まだオカミが何とかしてくれると信じ続けることってやっぱり異常なのだ。 いま僕らがはじめないといけないこと、それは「自らの判断のもと、自らの言葉で話をし、そんな人の話を聞く」ということなのだとつくづく思った。所属している組織の都合や、自分の仕事のメリット・デメリットだけで安易に自分の考えをねじ曲げ、平気で心にもないことを発言する世の中は、もうこりごりだ。そんなことやってたらいつまでたっても同じことの繰り返しだ。でももう次やったらおしまいだ。自分の言葉を持とう。個人に戻ろう。 そう明記してあったわけではないが、著者のそんなメッセージを僕はしっかりと受け取ったつもりだ。
東 浩紀
/ 講談社
(2011-11-22) /
1,890円
/ ISBN:9784062173988
だから東氏のこの提案には、なるほどそうきたか、と思わせるちょっとした痛快さを感じてしまった。 エッセイにしては歴史的で精緻な論考から導きだされる一般意志2.0の姿が、現在のtwitterやニコ生を応用したものかも、という展開にはちょっと拍子抜けするようなでもそうかもなと思わせるような、不思議な感慨を受けたのも事実である。 ところで民主主義という本題からは大きくズレてしまうのだが、読中なぜか「釣りバカ日誌」を思い出してしまった。平サラリーマンと仕事を忘れて接する社長が、社員の日常の会話の中から意外な経営のヒントを得てしまう、みたいな。 あるいは、先日読んだ伝記「スティーブ・ジョブズ」は真逆の意味で熟議を否定し、世界一熱心なユーザーたる自身の感性だけを信じて未来の一般意志(?)を実現していく様子など。 文を追いながら余計なことを想起させるエッセイはそれだけで素敵だ。 これが本当に実現性がある提案なのかといわれても、僕にはよく分からない。 それはこの文章が連載されたのは2010年、つまり僕らみんながtwitterやUstreamに明るい未来や希望を感じていた季節だったからだ。しかし著者の東氏自信がみずから体験したように、それは3.11震災や原発事故をきっかけにガラリと暗転し、なんとも鬱蒼としてヤサグレた世界に突入してしまった。もちろんこれから徐々にあの頃の輝きを取り戻すかもしれないし、もっと他に僕らの心を惹きつけるサービスが生まれてくるかもしれない。 でももはやあの日を境にしたSNSの変容というある種の挫折感を味わってしまった僕には、新生twitterも、新しいサービスも、おそらくはいつか風化し、沈滞し、忘却され、一部の人間たちの巣窟みたいな存在になってしまうのではないか、という漠然とした不安を拭い去ることができないのだ。 でもそれでも希望は忘れずに生きていきたいとも思う。 twitter経由でこの本に接し、新しい民主主義を探そうとする機運に触れてしまった僕らは、きっとこれまでとは違う目でニュースや友達の感想に接してしまうことになるのだろう。 --------「これがそうなのか?これは違うのか?」--------- どんなに挫折しようと、どんなに冷めてしまおうとも、やっぱりちょっとした夢は見ていたいよね、きっと著者はそんな思いで震災後のいま、この本を出したのではないかなあと感じた。 他人の思考実験テクストに触れることで自分が揺さぶられる、というのはつねに良質な読書体験だ。 P.S.國分功一郎の「暇と退屈の倫理学」と同時期に読んだことも面白かった。視座の異なるルソー論として。 ところどころ、1年ほど前読んだ岡田斗司夫の「評価経済社会」に通ずる部分も感じた。いやむしろ「ぼくたちの洗脳社会」という旧題のほうが適切かもしれない。
村山 斉
/ 講談社
(2011-07-21) /
861円
/ ISBN:9784062577311
原発事故以降、特に「科学」に対する不信感や過度な期待が交錯し、日本はまだ混乱の時期にあると思う。 そんな折にこそ科学の最先端の空気に触れてみることは、自分の中での判断基準を鋭くかつバランスさせることに重要ではないかと感じた。
ウォルター・アイザックソン
/ 講談社
(2011-11-02) /
1,995円
/ ISBN:9784062171274
ひとつの文化をゼロから作る楽しさと厳しさにあらためて思いを馳せる。第1巻からずっと感じていたのはビートルズの物語と全く似ているということである。ぶつかり合い、愛しあい、才能と才能で勝負し、妥協のない作品を創り上げていく。できあがった作品への強烈なこだわり。そして両者ともアップルという会社を作り、追い出されたり。 強烈な個性だけが時代を突き抜けるパワーを持つ。 現代ニッポンの弱点をつきつけられたかたちだが、いやまて俺たちはもう今までのニッポン人とは一緒でないぞ、311以降は特にな、なんて強がりを言ってみたくなった。 そう、有り体に言えば未知のものに挑戦するためのエネルギーが湧いてきた。
ウォルター・アイザックソン
/ 講談社
(2011-10-25) /
1,995円
/ ISBN:9784062171267
畑村 洋太郎
/ 講談社
(2005-04-15) /
560円
/ ISBN:9784062747592
著者は現在、原発事故調査委員長なのだそうだ。今回の問題点をしっかり洗い出して構成に知識化していく作業とともに、さらなる失敗学の発展に期待したい。 下記、自分用キーワードメモ。 第3章 失敗情報の伝わり方・伝え方 ・失敗情報は伝わりにくく、時間が経つと減衰する ・失敗情報は隠れたがる ・失敗情報は単純化したがる ・失敗情報は変わりたがる ・失敗情報は神話化しやすい ・失敗情報はローカル化しやすい ・客観的失敗情報は役に立たない ・失敗は知識化しなければ伝わらない ・六項目による記述が重要 1)事象,2)経過,3)原因(推定原因),4)対処,5)総括,6)知識化 ・決して批判をするな ・「偽ベテラン」 ・潜在失敗を含み損として捉える〜経済と失敗 ・失敗訓練を組み入れる〜人の心理と失敗 第7章 致命的な失敗をなくす ・技術の成熟と利益追求 ・萌芽期→発展期→成熟期→衰退期→破滅期 ・成熟期に起こる「作業の単純化」 ・「局所最適と全体最悪」 ・「封印技術」 ・縦割りの弊害 「人の営みを冷たく見る見方からは何も生まれず、暖かく見る見方だけが新しいものを生み、人間の文化を豊かにする。失敗は起こるものと考え、失敗に正しく向き合って次に生かすことが重要で、同じ失敗を繰り返さないためには失敗した当人に優しく接して勇気づけたい、 翻って失敗を無視し、隠し、責任回避するような風土を少しでも改めたい」
堀江 邦夫
/ 講談社
(2011-05-13) /
680円
/ ISBN:9784062770002
この本が優れているのは、反原発の活動家による告発ではないことである。たぶん僕と同じようなノンポリ青年がまるでインドの貧困を現地取材するようなタッチで、外から見ればあまりに異常な日常を淡々と描くところである。 だからこそ読者はそんな日記の描き出す原子力発電所という常軌を逸した世界を理解することができる。 21世紀に入っての原発事情はここに描かれた世界とは少しは改善されていたのだろうか。それは分からない。だが著者はあとがきで、311以降の福島原発ではさらに悲惨な状況が続いているはずだと訴えている。 詳しくは書かれていないがこの本を書いた後の著者の体も蝕まれ苦しんでいるようだ。 「311以前の日本に戻ることができたらいいのになあ」なんて考えてた自分を恥じる。なんのことはない、放射能まみれの世界はずっと続いてきていたのだ。爆発して広範囲に拡がっただけのことだったのだ。 もうひとつ。僕は地震と津波で破壊されるまで原発で行われている実態に気づかなかった。むしろ未来のエネルギーだと賞賛さえしていた。しかしそれは日雇い労働者たちの酷い現実によって支えられていたものだった。だとすれば今まさに僕らが賞賛しているテクノロジーだって実はそうなのかもしれない。 今度こそはそれが次なる災厄に至る前に知りたいし、知るべきなのだという思いにかられる。
佐野 眞一
/ 講談社
(2011-06-17) /
1,575円
/ ISBN:9784062170383
しかし後半の原発に読み進むと、実は明治から脈々と受け継がれてる日本の歴史に裏打ちされたフクシマという構図が見えてきてしまい、思わず体中の筋肉が硬直してしまう。 まさに高度成長時代と原発とはリンクしていたのだ。原発だけを悪と断ずれば、平成のライフスタイルを継続できると考えていた自分の浅はかさを恥じいる思い。巻末にて紹介されていた開沼博の「フクシマ」論をさっそく購入したのはいうまでもない。著者の「巨怪伝」も同時に。
佐伯 啓思
/ 講談社
(2004-11-19) /
798円
/ ISBN:9784061497498
それにしても僕らは祖先や国の歴史からは自由になれないものなのだろうか。
堀井 憲一郎
/ 講談社
(2010-08-19) /
777円
/ ISBN:9784062880657
ジェームス・D・ワトソン
/ 講談社
(1986-03-10) /
490円
/ ISBN:9784061837157
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